お知らせ

2018年10月05日

IgG高含有濃縮乳清タンパクの有用性について


弊社の特殊な濃縮乳清たんぱくについて順天堂大学医学部との共同研究の結果が2018年「食品開発展」のセミナーで発表されました。
IgG高含有濃縮乳清タンパクの有用性について
順天堂大学医学部微生物学講座 桒原 京子

牛乳は優れた高タンパク健康食品です。特にニュージーランド産の牛乳は、国の徹底した防疫管理のもと、牧草だけを食べている健康な乳牛から搾乳された世界で最も安心安全な食品の一つです。ニュージーランドは温暖で比較的雨量に恵まれています。この豊かな自然環境でビタミン・ミネラルを豊富に含む牧草が生育します。乳牛は一年中放牧され、全くストレスのない自然環境で、牧草だけを食べています。この完全な放牧による飼育は、125年間以上の歴史があり、現在でも様々な試行錯誤を繰り返し理想の品質の牛乳の生産を目指しています。

ニュージーランド産IgG高含有濃縮乳清タンパクは、ニュージーランド乳牛から絞られた牛乳を原料とした製品で、ニュージーランドで最も歴史と権威のあるオタゴ大学のイノベーションセンター内セプレックス社と株式会社ハイマートの5年間の共同研究の成果です。これまで、初乳の免疫グロブリンが食中毒など腸管感染症の予防に著しい効果があることが知られていました。そこで、この共同研究では、通常の牛乳から、初乳と同程度の効果を持つIgG含有濃縮乳清タンパク製品の開発を目指しました。具体的には、牛乳から、乳清タンパクの抽出、脂肪分離、二度のウルトラフィルトレーションによる副産物除去、スプレードライ製法による高可溶性粒子化、の過程を経て製品にしました。本製品には1グラムあたり、IgG250mg以上、sIgA7.5mg以上、ラクトフェリン5mg以上が含まれています。この原料の開発によって、安定供給可能なIgG高含有濃縮乳清タンパク製品を提供できるようになりました。

牛乳は、昔から最もバランスの取れた栄養食品であるとともに感染症予防などの免疫活性を持つ様々なたんぱく質が含まれることが知られています。60℃程度に加熱した牛乳を酢酸などで酸性にすると、カードと呼ばれる凝固物が出現し、液体成分の乳清(ホエイ)と分離されます。カードはそのままでもカッテージチーズなどのフレッシュチーズとして食品になりますが、多くはチーズの原料となります。カードの主成分はカゼインで、牛乳に含まれるタンパクの80%を占めます。カゼインは多数のリン酸基が結合した酸性タンパク(リン酸化タンパク)で、通常は酸性条件で荷電を失いお互いに結合して凝固します。また、容易にカルシウムと結合します。このため、チーズはカルシウムを高濃度に含む栄養価の高い食品です。

乳清タンパクは酸性条件でも可溶性で、主成分はβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、アルブミンです。これらは腸管から速やかに吸収されること、タンパク合成を促進するロイシンなどのアミノ酸が豊富に含まれていること等で、筋肉増強等のサプリメントとして効果が期待されています。これに加えて、乳清には免疫グロブリンIgG、sIgA、ラクトフェリンさらには塩基性タンパク等の機能性タンパクが含まれています。これらのタンパクは、感染症予防効果、免疫細胞の活性化、インスリン分泌を刺激するグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の産生増強による血糖値の抑制、ドーパミン分解抑制による認知機能改善効果が知られています。乳清はまた5%乳糖が含まれています。多くの日本人は乳糖を分解できず(乳糖不耐症)、下痢などを起こすことがあります。この原料は乳糖の含有量が低く抑えられています(1%以下)。

感染症予防効果を検証するため3種類の病原体を用いたマウス感染実験を実施しました。病原体としては、腸管感染症(食中毒)の原因菌であるサルモネラ菌及び腸管出血性大腸菌O157を、慢性肺疾患(非結核性抗酸菌感染症)の原因となるマイコバクテリウム・アビウム(MAC)を使用しました。マウスに抗菌薬であるストレプトマイシンを経口で投与すると、マウスの腸内フローラのディスバイオーシス(バランス失調)を誘導できます。これらのマウスは、サルモネラ菌及び腸管出血性大腸菌O157感染に対する感受性が著しく亢進します。感染実験ではこのマウスモデルを用いました。

サルモネラは、卵や鶏肉、その他汚染された食品などを介してヒトに感染を起こします。ペットや動物の排泄物から直接感染することもあります。嘔吐下痢などの急性胃腸炎で高熱を伴うことが多く、新生児・乳児・免疫不全や基礎疾患のある症例では、敗血症など重症化することもあります。実験では比較的毒性の強い株を用いました。コントロールでは、わずか25個のサルモネラ菌を経口から摂取しただけでサルモネラ感染症を発症しました。一方、感染直後からこの原料を投与したマウスでは、約30,000個のサルモネラ菌を投与しても50%以上のマウスが発症を免れています。これは、この原料がサルモネラに対する抵抗性を10,000倍以上高める効果があったことを示しています(図1)。

図1. サルモネラ菌経口感染マウスに対するIgG抗含有濃縮乳清タンパクの効果
サルモネラ菌経口感染マウスに対するIgG抗含有濃縮乳清タンパクの効果

大腸菌は、腸内フローラ内で常在菌として生存しています。一方、下痢原性大腸菌は、毒素または病原因子遺伝子を外来から獲得し、消化器症状の感染症を発症します。下痢原性大腸菌として5種類が知られています。汚染された食品などを介してヒトに感染を起こします。このうち腸管出血性大腸菌O157はベロ毒素と呼ばれる毒素を産生する大腸菌で、下痢原性大腸菌の中で最も重篤な症状を引き起こします。少ない菌数でも発症し、潜伏期も数日~10日とほかの食中毒に比べて長いことから、しばしば原因食品の特定が困難となります。下痢、嘔吐、 腹痛、時に発熱、 重症化すると血便、溶血性尿毒症症候群 や血栓性血小板減少性紫斑病、さらに痙攣や意識障害、死に至ることもあります。実験では、200個の大腸菌O157を経口摂取した50%のマウスが重症感染症を発症しました。一方、感染直後からこの原料を投与したマウスでは、約300,000個の菌を投与しても50%以上のマウスが発症を免れています。これは、この原料が腸管出血性大腸菌O157に対する抵抗性を1,000倍以上高める効果があったことを示しています。この発症予防の機序として、この原料が大腸菌O157の腸管上皮への定着を阻止するためではないかと推定してます(図2)。

図2. 腸管出血性大腸菌O157経口感染マウスに対するIgG高含有濃縮乳清タンパクの効果
腸管出血性大腸菌O157経口感染マウスに対するIgG抗含有濃縮乳清タンパクの効果

非結核性抗酸菌(MAC)は、結核と同じような慢性肺疾患の原因となります。日本や先進国では、結核発生患者数が減少しておりますが、反面、MAC感染症が増加傾向にあります。MACは多くの人で感染しても発症しませんが、免疫力が低下した宿主で高頻度に発症することが知られております。しかし、健康な宿主の発症も多く発症の原因(遺伝背景)は不明です。抗菌薬も著効せず、治療が長期化することがあります。結核と違い、ヒトからヒトへの感染はありません。MACをマウスに感染させると、徐々に肺での菌数が増加します。一方、この原料を投与したマウスでは、肺の菌数の増加がみられませんでした。この結果は、MAC感染症発症を阻止することを示唆しています。この原料に多量に含まれているIgGが血行性もしくはリンパ行性に体内に移行した結果かもしれない。新生児では、経口投与した免疫グロブリンが新生児Fc受容体(FcRn)を介して、能動的に体内に取り込まれることが知られています。成体でも経口投与した免疫グロブリンが体内に取り込まれるが、その量は新生児の1%に過ぎない。牛のIgGが腸管免疫を活性化することによる作用かもしれない(図3)。

図3. 非定型抗酸菌Mycobacterium Avium株感染後の週数
 非定型抗酸菌Mycobacterium Avium株感染後の週数

以上、ニュージーランド産IgG高含有濃縮乳清タンパクが細菌性下痢症の発症予防に非常に有効であること、非結核性抗酸菌症などの呼吸器感染症にも有効性があることが示されました。